歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
ひと粒のごはん零せば食べよとう目が潰れると言われし頃よ 倉石みつる
子どもの頃、食事の時にご飯粒を零したりすると、親から「お目め潰れる」と言われた作者。ひと粒でも大事にしなさいとどの家庭でも言われていた。フードロスのある現代への警鐘でもある。記憶をひとつの記録として歌に残していく姿勢がこの歌になった。
【佳作】
言の葉が枯葉のように散っていくSNSの風に吹かれて 土朗
生気を失っているように見えるこの頃の言葉。まるで枯葉のようだ。SNSでは言葉が整えられることもなく溢れ、強風にあえなく散っていくと作者。現代を巧みに捉えた作品。ボブ・ディランの「風に吹かれて」も聞こえる。
夜ふけてしばし一人で読書するうれしさあふれる秋が近づく 荒井よし子
猛暑にじっと耐えて涼しくなるのを待っていた作者。少し凌ぎやすくなった夜、好きな本を開く。静謐な歌になった。
【入選】
賞味期限過ぎれば全て棄てるとう勿体ないに育ちし我は 倉石みつる
秋風は暑さきびしきこの夏をしずかにしずめそっと立ち去る 荒井よし子
悲しみの瞳ギラギラガザの子ら いつになったらキラキラ星に 土朗
幾筋かおでこにしわが出てくれば提灯じわと言われビックリす 那賀吉弥
今回は、和歌山県出身の歌人道浦母都子(1947~)の歌を鑑賞したい。道浦は『無援の抒情』(1980)で歌壇に登場。「未来」選者。信毎歌壇の選者も務めた。最新歌集『あふれよ』(2024 角川書店)から。
この空は有事のそらと仰ぎ見ん剥ぎ出ししの青したたるばかり
子のなきこと少し幸せ 戦場に息子送ることのなきこと
【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞歌壇係