歌壇 安曇於保奈 選 24年12月

歌壇 安曇於保奈 選

【秀逸】

合言葉「欲しがりません勝つまでは」子らも我慢をしていた時代           倉石みつる

この言葉を知らない世代が多くなった。戦争中、国民はこう統制された。子どもも例外ではなかった。守れない者は非国民と言われた。語り継ぐべきことがある。歌の力。

【佳作】

黄泉へ行くパスポート用のこの写真少し若いが審査通るや       那賀吉弥

 上句が面白い。黄泉に行くにもパスポートが必要だとすると、少し若い頃の写真だが、通してくれるかと。ユーモア溢れる作品。

【入選】

アルプスの山なみを背に800株のダリアよここに戦いはあらず           悠

草枯葉燃やして灰にし鍋かまの洗剤として使い切りたり           倉石みつる

山茶花が咲き始めたる昼下がりキアゲハがくるきのうも今日も              荒井よし子

アメリカを偉大な国にするんだとトランプダンス神のまにまに              土朗

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 前月に引き続き、和歌山県出身の歌人道浦母都子の歌集『あふれよ』(2024 角川書店)から。

ハグしたい南京黄櫨の寸胴の幹は男の胸を思わすゆえに

キツネノカミソリの名を教わりし田井安曇兄信州人なりウワバミなりて

エレベーターの中ハグしてくれた年下の君あれは憐れみそれともグッバイ

わらわらと花咲くように傘、傘、傘、香港デモはそこまででいい

血縁のもろさ危うさ七年も会わぬ姉にも雛の明かりを

台湾まで一一一キロの与那国島は「台湾有事」の国境の島

口紅はいらなくなりて鏡台の抽き出しに寝てほおえんで居り

ひまわりのスカートをはくひまわりのブラウスを着る小さな抗い
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【応募要領】

■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可) ■住所・氏名・電話番号を付記

■締め切り毎月十日 ■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階

ちくま未来新聞 歌壇係