歌壇 安曇於保奈 選 25年11月

歌壇 安曇於保奈 選

【秀逸】

青い空は青いままでとコーラスは戦後の空は戦後のままで        宮坂岩子

 1971年(昭和46年)の第17回原水爆禁止世界大会に向け、公募で選ばれたのが「青い空は」という、小森香子作詞・大西進作曲の歌。コーラスでもよく歌われた。青い空は青い空のままで子どもらに伝えたい、という出だしの歌詞。新しい戦前とも思える昨今、戦後はずっと戦後のままでいてもらいたいという作者の平和への願いがこの歌に昇華した。

【佳作】

ものの怪を焼きつくすとや曼殊沙華萎れし朝気管支癒ゆる        百合

 秋の彼岸の頃になると、焔のような曼殊沙華が突然姿を表す。ものの怪を焼きつくすようだと作者。そのおかげか、気管支の調子が戻ってきた、と詠う。

【入選】

蒼空にすくっと立つはポプラの木北の大地のキャンパス広し    甘利真澄

声枯らしアレメンシェンと張り上げる第九仲間に馴染みの顔が 湯本孝一

日中のセミはか細く鳴く今夏夜の虫らはギシギシギーギ             中村妙子

稲わらを杏の根元に円く敷く花の春まで凍えぬように                 中村邦久

「アジア初」に潜みているや優越感何かもやもやまだそれを言う                 つきはら

ぬる燗に焼いた秋刀魚があればいい歌が聞こえる屋代の秋よ    替佐梅蔵

はしゃぎ合う孫とカラオケ三時間家に帰れば母へと走る             かつら

朝採りの妻のどや顔たのもしや至福を醸す朝餉の香り 土朗

 栗木京子の歌集『新しき過去』(2022)の歌を鑑賞したい。

葉の間にいちやうの緑き実の見えて新しき過去かがやくごとし

歌びとのわれは悲しむ幾たびも母国語を封じられたる歴史

【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係