歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
これほどの惨禍を数多抱えゐる地球も淋しき星のひとつか
百合
地球上には、自然災害に加え人災の最たるものである戦争が絶えない。この地球を欲深い人間が淋しい星にしてしまったのではないかと作者。人間が最も地球にダメージを与える存在になっているという「人新世」は大いなる警鐘。
【佳作】
どんど焼き矢倉の竹の残り火を見守り伝える地域の習い 中村邦久
道祖神祭り。作者の地域には引き継がれている。その歴史ややり方を作者は地域の若い人たちに竹の燃え残りを見守りながら話している。竹の燃え残りと伝統行事、見守る作者らが響き合い印象的な歌になった。
【入選】
水音を頼りにそろり蛍狩りなんてすてきなイルミネーション 甘利真澄
微笑みて見守っている遺影あり三月われの朝の始まる 倉石みつる
冬の日の日差し暖か杏の木剪定はかどりほんのり汗が 中村妙子
初雪をラインで送り返事待つ期待はせぬにスマホを開ける 湯本孝一
毎日が日曜日だと云う爺はゴミ出す曜日孫にたずねる 那賀吉弥
復帰せよと山田監督の声聞こゆ「学校」はわれを震わす 山野耕治
我が愚行知る人徐々に世を去りて安らぐ気持ち後ろめたくも つきはら
助けてと素直に言えぬ骨な爺受援力など鍛えにゃならぬ 土朗
前回に続き、高野公彦(1941~)の最新歌集『水の自画像』から何首か鑑賞したい。
どこに在る阿呆の天国ナラゴニア日本に在り議事堂に在る
「寄り添ふ」の好きな安倍氏は人よりも祇園精舎のカネに寄り添ふ
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係