歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
貝という小さきものの声を聞く自然と基地の沖縄の声
宮坂岩子
沖縄から川中島に嫁いだ方が、沖縄の貝を持ってきて、自宅に「貝と言葉のミュージアム」を開設された。作者はそこで貝の声を聞いたような気がした。基地のある沖縄に担わせている負担、自然の破壊を憂える声が小さな貝から聞こえたと詠い、秀歌になった。
【佳作】
手話の汝が吾に見せんと駆けて来ぬデフリンピックのチケット一枚 百合
「東京2025デフリンピック」が昨年の11月に東京で開催された。聴覚に障害をお持ちの選手たちの大会。出場される選手の方が、手話で作者に話しかけ「見に来てね」と大会のチケットを渡してくれた。作者の日頃の活動ゆえの一場面で貴重な歌になった。
【入選】
松葉踏む音空に消え山閑(しず)か獣ひそめる気配のみして 中村妙子
昭和史を修めし友は逝きたるも今こそ学べとわれを叱咤す 中村邦久
ゆったりと流れ下りし阿賀野川イザベラ・バードの旅路たどりて 甘利真澄
さくらいろのマニキュアをして春を待つゆきつくところ九十二歳 倉石みつる
喧嘩したことはないとの夫と妻どうして離婚を申し立てたの 湯本孝一
カラオケ店営業したる跡なるに居酒屋「たまき」の看板あらた 宮本律子
をばすての月見て行けや旅の蝶心急くとも羽を休めて 小針俊明
賑やかな砂利の採取は終わりです鴨の皆さんどうぞごゆっくり 替佐梅蔵
福笑いかるた双六凧揚げはお正月から逃げてしもうた 柳澤 純
群雀間合い詰めれば舞立ちてまた群れ降りる堤防の上 つきはら
久々湊盈子の『非在の星』(2023)から鑑賞したい。
玉砕という名の犬死 辻に立つ忠魂碑いまだ生花絶えずも
【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係

