歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
山桜かわたれどきを散りゆかむ
ほどほど孤独ほどほど自由
百合
「かわたれどき」は「彼は誰か」と顔が判別しにくくなった夕暮れ時のこと。「黄昏」も「誰そ彼」から来ている。山桜がもう散り始めているであろうと思いつつ、わが身を思うと、孤独でもありまた自由でもある。「ほどほおど」が二つについて歌になった。自分を桜に重ね、恬淡と老境を詠う。
【佳作】
愛犬を連れて散歩の人の顔犬に
似るとも犬が似るとも
甘利真澄
犬を散歩させている人の顔は、犬に似ているようにも、また犬が人に似ているようにも見えた作者。信頼関係にある人と犬をよく観察して歌にされた。
【入選】
承認欲求あるならんドレスアップしてウォーキングする つきはら
百旒(ひゃくりゅう)の鯉泳ぐ里五月晴れ幼き子らと二度ぼこのわれ 宮坂岩子
久々に再会するも見失う後頭部には面影なきに 湯本孝一
インフラのシステムトラブル起きるたび納入ベンダー連日徹夜 中村邦久
東京はQRコードで食事オーダー私には不便誰に便利か 中村妙子
雨上がり畑の草刈りそのそばでわれよわれよと鳥が群れなす 小橋浩樹
村まつり静かなお囃子聞こえ来る懐かしきかな華やぐまつり 昼行燈
前回に続き、高野公彦(1941~)の最新歌集『水の自画像』から鑑賞したい。
日本を救ふはずの火 魔の火となりて消せないその火
ヒトわれは光合成ができなくて草木(そうもく)を食み鳥獣を食む
【お詫びと訂正】
5月号掲載歌で「九十路翁短歌を武器とし六冊の満蒙開拓の歴史伝えぬ」の作者は宮坂岩子さんでした。お詫びして訂正します。
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階
ちくま未来新聞 歌壇係