歌壇 安曇於保奈 選 25年6月

歌壇 安曇於保奈 選

【秀逸】

山桜かわたれどきを散りゆかむ

ほどほど孤独ほどほど自由

百合

 「かわたれどき」は「彼は誰か」と顔が判別しにくくなった夕暮れ時のこと。「黄昏」も「誰そ彼」から来ている。山桜がもう散り始めているであろうと思いつつ、わが身を思うと、孤独でもありまた自由でもある。「ほどほおど」が二つについて歌になった。自分を桜に重ね、恬淡と老境を詠う。

【佳作】

愛犬を連れて散歩の人の顔犬に

似るとも犬が似るとも

甘利真澄

 犬を散歩させている人の顔は、犬に似ているようにも、また犬が人に似ているようにも見えた作者。信頼関係にある人と犬をよく観察して歌にされた。

【入選】

承認欲求あるならんドレスアップしてウォーキングする          つきはら

百旒(ひゃくりゅう)の鯉泳ぐ里五月晴れ幼き子らと二度ぼこのわれ   宮坂岩子

久々に再会するも見失う後頭部には面影なきに          湯本孝一

インフラのシステムトラブル起きるたび納入ベンダー連日徹夜              中村邦久

東京はQRコードで食事オーダー私には不便誰に便利か          中村妙子

雨上がり畑の草刈りそのそばでわれよわれよと鳥が群れなす   小橋浩樹

村まつり静かなお囃子聞こえ来る懐かしきかな華やぐまつり   昼行燈

 前回に続き、高野公彦(1941~)の最新歌集『水の自画像』から鑑賞したい。

日本を救ふはずの火 魔の火となりて消せないその火

ヒトわれは光合成ができなくて草木(そうもく)を食み鳥獣を食む

【お詫びと訂正】

 5月号掲載歌で「九十路翁短歌を武器とし六冊の満蒙開拓の歴史伝えぬ」の作者は宮坂岩子さんでした。お詫びして訂正します。

【応募要領】

■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階

ちくま未来新聞 歌壇係