歌壇 安曇於保奈 選 25年7月
【秀逸】
ザワワザワワさとうきび畑の少女にとユリノキのもと落花をひろう
百合
1964年に寺島尚彦が沖縄を訪れたときに着想してできた『さとうきび畑』の歌。戦争で父を亡くし、戦争が終わった日に生まれた少女がさとうきび畑を歩いて父の面影を辿る歌。歌詞に、「知らないはずの父の手にだかれた夢を見た」「父の声をさがしながらたどる畑の道」とある。沖縄全戦没者追悼式(沖縄慰霊祭)は6月23日。ユリノキの花が咲く頃。その落花を拾って少女に届けたいと作者は詠う。
【佳作】
駅うらで抱き合う二人の高校生朝のベンチは青春まぶし
甘利真澄
ある朝の、しなの鉄道の駅の駅裏。通りかかると高校生の男女がベンチで抱き合っている。おいおいと思いつつ、ご自分が高校生だった頃の姿かと作者。結句がいい。
【入選】
たんぽぽは白髪になりて風に舞う我も白髪になりてたんぽぽ
中村邦久
眠れない夜は想い出の旅をするあの人この人会っておかねば
倉石みつる
梅雨空に蛙声を聞けばあれこれと田植えの思索せし頃遥か
つきはら
別居して面会求め調停す子には福祉も親は葛藤
湯本孝一
姨捨の歴史見守る名月に「田毎の月」を広重描きぬ
昼行燈
日々解けるアルプスの雪急登で見た花々をまた見に行こう
中村妙子
コメなけりゃパンにパスタにうどんそば戦中派にはノープロブレム
土朗
初孫と幼き頃の我が息子3Dのごとよくもここまで
小橋浩樹
埴科幹線水路・尾米川・新田用水五十里川あり
宮坂岩子
【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係