歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
馬酔木咲き大伯皇女顕ちにけり弟の無念詠へり姉は
百合
「磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに」(万葉集 巻2‐0166)がある。馬酔木を手折って君に見せたいと思っても、見せてあげる弟に会ったとは誰も言ってくれない、という歌。謀反の罪で処刑された弟の大津皇子を偲んで、姉の大伯皇女が詠んだ。弟の魂が夢枕に出てきたと言ってくれる人は、弟が罪人であるがゆえに誰もいない、と姉。馬酔木に導かれ、往時に思いを馳せた歌。
【佳作】
文化祭萬葉恋歌を発表す「石井の手児」がメロディとなり
湯本孝一
「人皆の言は絶ゆとも埴科の石井の手児が言な絶えそね」(万葉集 巻14‐3398 作者不詳)の歌がある。千曲市倉科公民館にこの歌の歌碑がある。作者は、この和歌に曲がつけられていたことを知り、文化祭で発表した。和歌と地域の文化活動のコラボ。
【入選】
物置で静かに暮らすオートバイ脳裏を過ぎる彷徨の頃
昼行燈
島々を隔つ黒潮切り裂いて轟音立てて定期船行く
つきはら
金沢城の石垣作りし穴太衆四百年後も堅牢の技
中村邦久
赤ちゃんはいつ生まれるのと問う孫の指差す先はわが太鼓腹
甘利真澄
真夏日に大粒の雨待ってました花や野菜に跳ねる雨粒
中村妙子
夏の夜瞼閉じれば浮かび来る土のグランド緑の芝生
小橋浩樹
暗闇で素振りの音を聴き分ける長嶋選手見せない努力
宮坂岩子
どぶ板を踏み越えて行くスイスイとSNSが票を?んで
土朗
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)
■住所・氏名・電話番号を付記
■締め切り毎月十日
■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階
ちくま未来新聞 歌壇係