歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
根長50センチ目方3・5キロのおでん大根赤児のようにしっかりと抱く 宮本律子
栽培しておられるおでん大根は相当大きいようだ。「根長」、「目方」という言葉に続く数字がリアル。これを収穫して運び出すのはさぞかし大変であろう。作者はそこを、重いけれども大切に、「赤児のようにしっかりと抱く」と詠った。農作業からの心地よい歌。
【佳作】
何故だろう虹に向かって走っても追い越すことができないのです 替佐梅蔵
初冬の雨上がりに虹が出た。運転中の作者はその虹に向かって走っているのだが、追い越すことができない。不思議だ、と感じる子どものような感性がそのまま歌になった。口語の自然な流れが瑞々しい。
【入選】
グルグルと回りて落ちるイチョウの葉マジシャン操るカードのごとく 甘利真澄
不同意で未遂のわいせつ裁判を起こす女性の生き方強し 宮坂岩子
友の母飲む「栄川」の清しさに魅せられ去にし二十歳の私 湯本孝一
明日香路の万葉歌碑など忘れしが亡友とひろいし落ち葉の栞 百合
賢人の歴史を学べとの声むなし聞く耳もたぬ現世の為政者 中村邦久
ガザにては笑顔は生きるためのもの尊厳であり抵抗であると 柳澤 純
宴跳ね放歌し街を千鳥足駅路は遠く終車去りゆく 小針俊明
退職後やっと楽しむ平凡の日こたつで眠る猫のぬくもり 中村妙子
上弦の月を背にして冬散歩雲ひとつなし 夕陽を見やる つきはら
窪田空穂の『窪田空穂歌集』(岩波文庫)より「正月」と題した歌(昭和32年)を鑑賞したい。
老われも夢なきにあらず初日満つる今日のよき日の真蒼なる空
除夜のかね余韻の長くたゆたひて消えやらぬ音の胸にまつはる
【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階ちくま未来新聞 歌壇係
