特集① 日本デルモンテ
◆千曲市の長野工場生産 来年6月に終了 群馬県沼田市の群馬工場に集約
千曲市桜堂などにまたがる日本デルモンテの長野工場は、来年2025年6月に閉鎖する。親会社のキッコ―マンが昨年10月25日に発表した。来年6月までに同工場での生産を終了し、群馬工場(群馬県沼田市)に新たな投資をして生産機能を集約する方針だ。
本紙の取材に対して、小塚太社長は「生産は今年9月に一部の生産を終えて、来年6月までに2段階で操業を終了していく」と段階的な生産終了を明かした。
長野工場は1961年(昭和36)に稼働を始めて現在はトマトジュースや野菜ジュース、果汁飲料など飲料を中心に生産している。移管先の群馬工場はトマトケチャップやソースといった調味料が中心という。
長野工場で働く従業員は約80人、このうち転勤を伴う総合職は10人。群馬工場への配置転換のほか、日本デルモンテの他事業所やキッコーマンの国内グループ会社及び他の事業所への再就職支援等を行い、雇用の確保に努めるとしている。
従業員の再就職について小塚社長は「地元の同業の企業さんからも、『うちで勤めてもらえないか』といったお声をかけていただいている」と語った。
◆デルモンテの工場と地域
千曲市のこの地で60年以上、主にトマトジュースの生産工場として知られてきた「デルモンテ」。昭和36年、日本が高度経済成長に向けて動き出した時代だった。当時を知る屋代本町(現在の屋代一区一常会)の80代の住民の方は「あのころは住宅と屋代南高校のほかはなにもなかった、国道18号線の周りも桑畑が広がっていた」と振り返る。別の住民は「トマトを搾った後の汁が今の大川(五十里川)に流れて、夏になると護岸からトマトが生えてきた。種も含まれていたようだ」と話した。工場の生産設備が改良され、川の護岸もコンクリートに整備されて、現在、そうしたことは起きていない。
今回のキッコーマンの発表によると、長野工場の正式名称は「日本デルモンテ株式会社 長野工場」。所在地は千曲市桜堂485番地、操業開始は1961年7月。敷地面積は14048㎡ 。従業員は87人(2023年10 月1日現在)、生産品目は飲料、リンゴ加工品と記されている。
◆社会構造の変化
デルモンテの生産体制再編の目的は、環境変化への対応。日本国内において、少子高齢化・単身世帯の増加など社会構造の変容とともに生活者の意識・行動・ライフスタイルの変化により、ニーズはますます多様化してきている。労働人口の減少が見込まれる中、IT、データの積極的な活用も行いながら、生産のあり方も変わっていくものと思われる。このような環境変化に対応した結果、生産機能の集約となった。
日本経済新聞の報道によると、機能の集約にともない、現在群馬工場で生産しているキッコーマンの焼き肉のタレなど一部商品は、2024年4月に稼働した千葉県野田市の新工場で生産する。新工場ではしょうゆ関連調味料を専門に製造するということだ。
長野工場の閉鎖にともない、日本デルモンテの生産拠点は群馬工場の1拠点のみとなる。生産を終えた長野工場の土地や建物の用途は現在では未定だが、キッコーマンが決定するという。
(本紙特任記者・中澤幸彦)
日本デルモンテの小塚太社長
上空から見た日本デルモンテ長野工場