特集①「屋代スマートIC」(仮称)周辺施設の未来 ★「覚悟」を決めて千曲市と市民らで作ろう

特集①「屋代スマートIC」(仮称)周辺施設の未来 ★「覚悟」を決めて千曲市と市民らで作ろう

 「屋代スマートインターチェンジ」(仮称)の計画概要が千曲市から発表された。国土交通省道路局と千曲市は上信越自動車道へのスマートインターチェンジ(IC)の設置を関係機関と連携して進めていく。

 この計画は令和5年9月8日、「屋代スマートIC新規事業化」として全国のスマートICの計画の一つとして事業認可された。概要は、関越自動車道上越線(上信越自動車道)で、位置は千曲市屋代地内、運用形はフルインター形式、運用車種はETC車載器を搭載した全車種、運用時間は24時間となっている。

 千曲市東部地域の屋代、森、倉科、雨宮、生萱には「地の利と利便性」への期待が持てる。ただ屋代スマートICへのアクセス道路が整備されて、周辺施設の利用が活性化されないとスマートICを設置した意義が薄れてしまうだろう。

 千曲市は屋代スマートIC周辺の交通拠点や関連施設の整備について市民をはじめ民間事業者などから意見や事業アイデアを聞く「サウンディング調査」を実施した。この聞きなれない用語は、コンサルタント用語なのか分かりにくい。「聞き取り調査」で十分だろう。

 この調査は千曲市公民共創推進室と株式会社オリエンタルコンサルタンツ(東京都渋谷区)が担当している。8月23日に市民からの意見を聞く機会が設けられ、記者も参加した。市民ら約20人が参加し、5、6人で3つのグループに分かれて「どういった施設が必要か」「市民が必要なものは何か」といった意見が出されて、終了後、グループごとに発表した。

 こうした機会は大事だが、果たしてコンサルタントに委託する必要があるのか、市の担当職員が地元自治会などの協力を得て、若い層から中堅、高齢者までの男女の意見を広く聞く方法もできたのではないか。

 いろいろな意見が聞かれたが、「3歳と0歳の小さい子供がおり、気軽に遊ぶことができる施設がほしい」といった他県から移住をしてきた主婦の意見はなるほどと思った。一方で、戸倉、上山田からの参加者は「どんな意見が出るか関心があった。ただ上山田の住民の多くは、このスマートICへの関心は薄い」と本音の声もあった。

 「屋代スマートIC」周辺施設の未来はどう描くか。コンサルタントにすでに委託しているならば、徹底的に利活用して、「覚悟」を決めて千曲市と市民らで考えて練って計画を作り上げていくべきではないだろうか。現場をよく見て、想像力を働かせて知恵を出していければ良いと思う。

★地方創生を「コンサル」頼みでいいのか

 地方創生の「旗振り役」である政府の「まち・ひと・しごと総合戦略本部」。ここが策定した基本計画に基づき、全国の都道府県や市町村は地域戦略づくりに取り組んできた。

 予算が「補助金」として各自治体に拠出され、そこから戦略づくり、計画書づくり、委員会の事務局など、机上のデータ取得作業から現場の意見を聞く委員会の企画運営まで、ほぼすべてがコンサルタント任せとなった。

 「役所のスタッフだけではできない」「人もノウハウもない」。行政側はできない理由を並べる。千曲市の今回のケースはどうだろうか。委託したコンサルタントは地域に住んで、意見を細かく聞き、最終的な完成まで面倒を見てくれるわけではないだろう。

 多くのケースを聞くと、自治体職員が地域の未来を描くことの責任を棚上げして、コンサルタントという「専門家」に丸投げしているに過ぎない。結果、各地で似たような「計画」ができている。

「当事者の責任」と「地域の覚悟」が欠けていると、机上でつくられた報告書だけが棚に並び、現場には何も残らない。補助金と委託費、税金も中央に持っていかれて、地域には「失望」と「無念さ」だけが残る。これが何度も繰り返されてきたことを千曲市民はもっと知ってほしい。(本紙特任記者・中澤幸彦)

屋代スマートインター周辺の施設について市民からの意見を聞くワークショップ 千曲市が委託しているコンサルタントが仕切った (千曲市市民交流センター てとて 8月23日))

スマートICと接続する一重山2号線の建設現場(白石千曲線合流付近)