特集② 千曲市の令和7年度予算 「魅力ある住みよいまちづくり」事業は約3億円
千曲市の令和7(2025)年度の一般会計当初予算の中で、「魅力ある住みよいまちづくり」の内容をみてみた。地域的には、戸倉体育館エリア整備、屋代の旧屋代小学校本館、姨捨の棚田を一望できるポイントの外構施設や案内板、公衆トイレの整備など概算で約3億円の予算が盛り込まれた。
主な事業をみると、戸倉体育館エリア整備事業として5300万円を計上。市の「総合運動公園基本構想」を踏まえて、新戸倉体育館の整備を進めて、市民の健康増進やスポーツ施設を中心とした街づくりで市民の交流人口の増加によって地域の活性化を図りたいとしている。
屋代地区では、屋代小学校旧本館整備事業に1億8000万円を計上、耐震と改修工事を実施する。千曲市指定の有形文化財として保存し、さらに児童をはじめ地域住民の活用を図りたいとしている。
ただ、市民の一部からは「地域的にバランスがよいかどうかは疑問」「すくに耐震補強が必要なリスクの高い施設、とくに児童や園児が通う小学校や保育園は優先して対応するべきだ」といった声も強い。例えば、稲荷山地区の文化的事業については令和7年度予算ではこれといった事業はないようだ。
◆稲荷山重要伝統的建造物群保存地区 糀屋を核に「街の活性化」構想検討
稲荷山地区の文化事業の予算は計上されていないものの、稲荷山重要伝統的建造物群保存地区では、稲荷山郵便局と糀屋を中心にした「歴史的文化財」を活用した街の活性化計画が市教委の歴史文化財センターで練られているという。
この構想計画は歴史文化財に詳しい関係者によると、昨年秋に糀屋の土地(家屋を含むという)を千曲市の土地開発公社が買い取っており、今後、令和8年度以降の当初予算で調査費を要請していく方針という。周辺の施設とともに、誘客できる観光の「歴史的文化財施設」として整備していく計画。旧北国街道の西街道としてかつて栄えた「町屋敷」などの復活に期待したい。
このほか、「シティプロモーション推進事業」として1200万円が計上されている。これは公開が予定されるテレビアニメ「Turkey!」(ボウリングで三連続でストライクをとること)の活用や千曲市PR大使と連携した活動で、観光客に市へ来てもらう取り組みを進めるという。すでにしなの鉄道屋代駅や循環バスの車体にPRのプリントが披露されている。
◆老朽化する治田小、上山田小の改修で耐力度調査に6000万円
予算組み替え可決
3月14日の千曲市議会で、市提出の2025年度一般会計当初予算案を組み替えるよう求める議員提出の動議を賛成多数で可決した。市公共施設個別施設計画に基づいて、治田、上山田の両小学校の老朽化の程度についての耐力度調査費6千万円を計上するよう要請した。信濃毎日新聞によると、小川修一市長は動議の可決を受けて、「財源の確保ができた時点で遅滞なく予算化する」と表明。予算案は賛成多数で原案通り可決された。
個別施設計画によると、治田小は建築から52年、上山田小は57年が経過して老朽化が激しいという。市の計画によると、2025年度に耐力度調査を実施して結果を踏まえて改修するとしていた。小川市長は、急を要する他の施設の設備改修を優先せざるを得なかったなどと説明していたが、関係者によると「リスクが高い」という。「何を優先するか市はよく現場をみてほしい」と指摘する声もあった。
動議は宮下繁明議員が提出。「教育環境の整備を優先し、先送りするべきではない」として、調査費計上を求めた。議長と欠席議員1人を除く18人で採決し、賛成15人、反対3人だった。小川市長の表明に対して、柳沢真由美議員が緊急質問。「遅滞なく」とはどういうことかと問われた小川市長は「決算状況を見極めながら、6月補正を念頭に置いている」と答弁した。
総額316億円余りにのぼる過去最大規模の当初予算案は賛成11人、反対7人で可決された。
特別会計として、国民健康保険約53億7千万円、介護保険約55億7千万円、後期高齢者医療10億7千万円の総額百二十億三千万円を計上。公営企業会計として、下水道事業に51億5千万円、水道事業に4億6千万円の総額56億1千万円余りが計上されている。
(本紙特任記者 中澤幸彦)
屋代小学校旧本館 (旧屋代学校)建築:明治21年(1888)
文明開化を象徴する“擬洋風建築”の建物。県内の現存する明治期の学校建築で屋代小学校より古い校舎(旧開智学校、旧中込学校、旧和学校、旧格致学校等)は軒並み国宝、重要文化財、県宝の指定を受けている。
【市内小学校建築年数】(校舎のみ・建築年順)
「令和6年度版 千曲市公共施設個別施設計画(学校施設編)」を参考



