特集③ 上山田文化会館 Vol.1 市内最大の文化施設の歴史と現在

特集③ 上山田文化会館 Vol.1 市内最大の文化施設の歴史と現在

様々な催しに使用される文化伝承創造都市・千曲市の象徴・上山田文化会館 

 上山田文化会館は収容人数1000人(固定席952)の大ホールを有する千曲市内最大の文化施設である。昭和55年(1980)、当時の上山田町が文化庁の補助金も受けて12億円の巨費を投じて完成させた。これは長野県県民文化会館の建設より3年も早く、県内での本格的な設備を備えた大型の会館の先駆けとなった。名称を「上山田町民文化会館」ではなくあえて「上山田文化会館」としたのには、上山田町民だけではなくこの地域を代表する文化施設としての役割を担う想いが込められていたという(ちなみに文化会館建設の3年前には上山田町の新庁舎が完成しており、同じ東京の設計業者が手掛けたためデザインの意匠には通じるものがある)。

 旧上山田町の収入役を務めた若林民雄さんは当時を振り返り「地域文化の向上や事業誘致のため1000人規模の収容人数にした。県下随一のものを作ろうということで音響施設にも相当お金をかけた」と話す。

 それまで上山田町では大規模な大会を開催する際は宿泊する温泉旅館の会議室などで対応していた。しかし、それでは旅館の従業員の負担が大きいことから、大会は大型施設で開催してもらい、移動して旅館に宿泊するというスタイルを求める声があったという。文化会館の建設には

上山田温泉旅館組合が建設補助金として5000万円を寄付している。

 県内でもまだ例のない大型施設の建設に当たり、町では前年に技術研修のため2人の職員を東京の厚生年金会館へ派遣した。その1人である金子好典さん(現・上山田文化団体連合会顧問)は様々な先進的アイデアを取り入れた。現在は使用されていないが、館の屋上にある特徴的な時計台には大中小3連式の「洋鐘」が備え付けられ、朝夕1日2回音楽が鳴らされていた。また、壁面の「上山田文化会館」の文字板は電飾が据え付けられていて夜には光輝いていたが、その後故障してしまい、そのまま現在は使われていない。

 県内でもトップクラスの設備と規模を備えて開館した文化会館はこけら落としに能と狂言の舞台が行われた。翌年には落成記念で「NHKのど自慢」の会場になった。その後も、傷痍軍人会の長野県大会の会場として使用され続けたほか、様々な大会や集会、イベントを招致し、東北信エリアにおける観光・交流の中核拠点として町の振興に大きな役割を果たしていく。

 しかし、竣工から半世紀近くを経て会館内の設備は老朽化が進み、ガスヒートポンプの故障やステージの傷み、壁の劣化が酷くなっている。

舞台裏のトイレは洋式化されたものの古いタイプのままで、県外からの出演者には使用をお願いし難い状態にあるという。次号では館内の現状を視察したレポートをお届けする。

(取材と文・白石茂樹)

完成間近の上山田文化会館 (撮影:昭和55年5月 「写真集 上山田の百年」より)

1階大ホールの観客席