特集 千曲市新年度予算 316億5千万円 過去最大 こども医療費、子育て・教員、交通インフラの「均衡予算」
千曲市は2月10日、過去最大となる総額316億5千万円の2025年度(令和7年度)一般会計の当初予算案を発表した。前年度当初予算と比べて2.3%増となる。主な新規の事業として、子育て支援では病院や薬局などで18歳以下の福祉医療費の窓口負担を夏頃までに無料とする。3歳未満児の「受け皿」として、小規模な保育事業所を賃貸物件によって設置運営する民間事業者を募集し、改築費用などの一部を助成する。
このほか県と連携して、県外から移住して千曲市内の保育所に就職する保育士に対して補助金を交付する。県の認証を受けている「フリースクール」の利用者に一人当たり月1万円を上限にして利用料を支援する。
交通インフラでは、産業連携ネットワーク道路基盤整備事業として、東西連携軸となる都市計画道路「一重山線」の一部である「市道一重山2号線」「市道打沢新道線」の整備により4億1400万円を、屋代地区のスマートインターチェンジ整備事業として、3億4700万円がそれぞれ計上された。
★農学部開設で清泉側千曲市に4億円支援要請
市議会で協議 承認後、長野県も同額支援か
新年度予算で、千曲市の特色を磨きあげて、賑わいと活力ある街のため「新規」事業の中で高等教育機関関連対策として、清泉大学農学部(仮称)の新設にあたり、市民への周知を図るため「イベント」を具体化したいと市はいうものの、20万円が計上。新規とはいえ額は手探りの状態といえよう。
関係者によると、今年1月に千曲市の清泉大農学部開設にあたっての支援策を取りまとめる担当課から市議会側に「清泉側から4億円を支援してほしいとの要請があった」と説明があったという。清泉側は「本学から回答できることはない」としている。
資金の話が先に出た背景には、千曲市がまとまった額の支援策を表明すれば、長野県も「同額」を支援する前例があるからだ。2017年11月に報道された清泉女学院大学看護学部の長野駅東口への開設にあたって、長野市の補助金は4億3250万円、長野市議会で承認後に県に要請し、同額の補助金が拠出された。国の交付金1億円と合わせて9億6500万円の公金が支援された形だ。
このケースを踏まえて清泉側は千曲市に「4億円支援」を要請、市の議案提出で市議会が承認すれば、長野県も同額の4億円を補助して、政府の理系大学学部新設の「大学・高専機能強化支援事業」の補助金13億数千万円(上限20億円とされる)と合わせて、最低でも21億円の資金が準備されることになる。
旧更埴庁舎の跡地は更地化されて、農学部の運営が軌道に乗るまで「無償で提供して、何年後かに軌道に乗れば年間5百万円の賃料をお願いしよう」といった市の関係者の声も聞こえる。
千曲市の支援策はまだ策定中とされるが、「4億円支援」は新年度予算に盛り込まれていない。今後、本年度の補正予算で計上するか新年度に回すかを含めて、市議会は議論を尽くしてほしい。千曲市内での高等教育機関の開設を実りあるものにするために市は清泉側と連絡を密にした「千曲市・清泉大農学部連携室」は発足していくべきだ。

決定した内容は、市民に迅速に公表してもらいたい。市の関係部署が横断的になるため、小川市長のリーダ―シップが大いに問われよう。
(本紙特任記者・中澤幸彦)
市道一重山2号線の建設予定地(現在は遺跡の発掘調査が行われている【関連記事10面】)
