長野県立歴史館「青少年義勇軍が見た満州」創られた大陸の夢
8月22日まで
この夏、長野県立歴史館で令和3年度夏季企画展「青少年義勇軍が見た満州」が開催されている。8月7日に関連シンポジウムで講演を行う長野県歴史教育者協議会副会長の飯島春光さんから寄稿をいただいた。
「満洲移民」の歴史を皆で学びましょう
「私も中学時代にこういう授業を受けていたら、もっと違う人生があった気がします」。拙著「ひいばあちゃんは中国にお墓をつくった」を読んだ大学生がメールをくれました。彼女は、曾祖母が長野県の満蒙開拓団出身の中国残留婦人でした。中学時代、後輩に「中国人のくせに」と言われて傷つき、高校時代は自分のルーツから心を閉ざしていました。大学生になり、拙著を読んで曾祖母のことや、その娘として育った、日本語を話せない祖母の歴史を全く知らない自分でいいのかと自問。曾祖母の所属した「開拓団」の歴史や祖母の人生について調べ、論文を書き上げました。そして、自分のルーツを胸に、いままでとは違う彼女の人生を歩き出したのです。
この本の元になった実践は、2000年に赴任した中学校で、大勢の中国由来の生徒(「残留婦人」「残留孤児」の孫やひ孫)に出会い、彼らが「おい中国人」「日本語も話せないのに何で日本にいるんだ」「中国へ帰れ」などと聞くに堪えない言葉の暴力にさらされている事態に直面したことが出発点でした。
「満洲移民」の歴史を知らない人が多く、当然のことながら「残留婦人」「残留孤児」と呼ばれた人々がどれほどの苦難のなかで命をつないできたのか。中国人に助けられ、かの地で数十年も生きてきた人々の人生について、一般の人々は知る由もありません。自分には何の責任もないのに、戦争の傷を引きずっている人々が今もおり、その子や孫たちも、様々な悩みを抱えているのです。だからこそ、「満洲移民」は過去のことではないと私は言いたいです。県、市町村ぐるみで「満洲」へ開拓団を送り出した歴史を踏まえて、改めて今、その歴史を皆が学ぶべきであると考えています。
飯島春光(元中学校教員)