フォト&エッセイ 自転車のある風景 第二十二回 オーストラリア横断自転車旅行⑩  ロブとナスターシャ

フォト&エッセイ 自転車のある風景

 ロブとナスターシャ
 ロブとナスターシャ

第二十二回 オーストラリア横断自転車旅行⑩

 ロブとナスターシャ

面積は日本の20倍なのに人口は5分の1という国土が広いのに人が少ないオーストラリア。ほとんどの都市は大陸の東側にあり、東西の都市を直接つなぐ道路はナラボー平原を横断する道ただ一本。都市間の移動は通常飛行機なので、何日もかかる陸路を選ぶのは途中のロードハウスへ物資を輸送する等必要な用事がある車か、それ以外は物好きだけ。自転車でそこを走っている自分もその一人なのだが、そんな自分に声をかけてくる人が多いのは゛ナラボーを走っている"という妙な仲間意識があるからなのかもしれない。 バラドニアの手前で出会ったロブとナスターシャの二人も多分そうだったのだろう。けたたましくクラクションを鳴らしながら自分を追い抜いていった赤いスポーツカー。だがしばらくすると道端でボンネットを開けて止まっている先程の車と、その傍らでビール片手にこちらに手を振っている怪しいカップルが見えて来た。ひげ面にサングラスの如何にも胡散臭いロブと、砂漠に不似合いな白いドレスのナスターシャ。乗っていたフェアレディZがオーバーヒートしたという彼らは、旅の間に自転車で走っている自分のことを何度も見かけたといって親しげに話しかけて来た。おまけに車内から冷えたビールを取り出すと、自分にも飲めと言って差し出したのだ。素直に受け取って飲むのには差し出した相手があまりにも怪しすぎる。昔見た映画の一場面のように、気が付いたら身ぐるみ?がされて砂漠に転がされている自分の姿が頭に浮かんだ。しかし躊躇したのはほんの一瞬。気温45度の砂漠では目の前の冷えたビールの誘惑には抗えず、結局3人でボトルを鳴らして乾杯することになった。この時は美味しいビールをご馳走になって何事もなく別れたのだが、彼等とはその後すぐに再会することになった。

 というわけで、次回、ロブとナスターシャその2に続く。