essay 東京だより(第6回)

essay 東京だより(第6回)

著者紹介 

 森村たまき 翻訳家 内川出身

 こんにちは、イギリス生まれのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。いつもは東京でご活躍される千曲市ゆかりの方々をご紹介させていただいておりますが、アメリカウッドハウス協会のコンベンション参加のため、5年ぶりにアメリカに行ってまいりましたので今回はその話をいたしましょう。

 P・G・ウッドハウス研究者愛好者が集まるウッドハウス協会は世界中にあるのですが、イギリス協会、アメリカ協会の二つが歴史も長く、会員数も多いのです。イギリス協会は2年に一度「ソサエティ・ディナー」を開催し、それと重ならない年にアメリカ協会が2年に一度の「コンベンション」を開催します。今回はテネシー州ナッシュビルのヴァンダビルド大学図書館が「ウッドハウス・コレクション」を開設し、それを記念する式典が行われるのと併せて、10月26日から29日まで同大学にて開催されました。私にとっては2019年のオハイオ州シンシナティ会議以来、コロナ時代に入ってから初めての参加、ひさびさのアメリカ、本当にひさびさの海外行きでした。円安ドル高に加えてアメリカのインフレは激しく、もう次は行かれないかもしれないのだからちゃんと話もしてこようと、「ウッドハウス翻訳の20年」というような発表をすることにしてしまったので渡米前から緊張は激しく、案の定直前まで報告の準備は整わず、不安を抱えての出発となりました。

 とはいえ着いてしまえば大丈夫なのもいつものこと。私はコンベンション参加時には必ずニューヨークのロングアイランドのウッドハウスのお墓にお参りして、ウッドハウスの終の住処を訪ねることにしているのですが、今回も電車を乗り継いで行ってきました。お墓参りしてウッドハウスの家の周りを散歩して、帰る前にもう一度お墓に戻ってきたらなんと、鹿がいました。それも5頭!! 鹿がすぐそばにいる墓前でコンベンションの報告の練習をして、がんばってきますねと約束してウッドハウス終焉の地を後にしたのでした。ナッシュビルでのコンベンションの模様は次回に。

写真はウッドハウスのお墓越しに見た子鹿