essay 東京だより(第7回)
こんにちは、イギリス生まれのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。東京でご活躍される千曲市ゆかりの方々をご紹介するはずのコーナーですが、前回に引き続きテネシー州ナッシュビルで開催されたアメリカウッドハウス協会のコンベンションの続編をお届けいたしましょう。
テネシー州といえばアメリカ南部、ジャックダニエル・ウイスキーの生産地くらいの認識しか持っていなかったのですが、ナッシュビルはカントリーミュージックの都であるのだそうで、大会ツアーには『カントリーミュージックの殿堂』訪問が組み入れられていました。移民の国アメリカの歴史を音楽で辿る展示は、思いのほか面白かったです。
今大会の眼目はヴァンダビルド大学図書館「ウッドハウス・コレクション」開設記念式典。ウッドハウスの出生証明書をはじめとする貴重な資料の特別展示もあり、参列できてよかったです。
ところで、今回のコンベンションは戯れに「国際」大会と称していました。というのは8名の報告者中4名、すなわちイギリスから2名、オランダから1名、そして日本から私が1名、が、アメリカ国外からの参加者であったからです。「文学的に/文字どおり、甘美と光明を振りまいて??日本におけるウッドハウス翻訳の20年」というお題で行った私の発表は、幸い聴衆に暖かく迎えられ、無事に終わってホッとしました。
報告が終わると夜はバンケットとなるのですが、これには毎回ウッドハウスの作品にちなんだコスチュームでの出席が奨励され、優秀者には賞が出ます。実は私は毎回受賞者の常連でして、今回も甘美と光明を振り撒く「バターカップガール」で登場人物そっくり賞を獲得しましたよ!
最終日曜日はブランチをいただきながらニューイングランド支部が演じる毎回恒例「マリナー氏」ものの寸劇を楽しみ、ひさびさに出会えたウッドハウス友人たちと涙のお別れとなったのでした。もうこれで最後かもしれないと思って参加した大会でしたが、2年後の次回はウッドハウスの終の住処、ロングアイランドで開催とのこと。また行きたいなと思ってしまいました。
写真はがんばって登壇したところ
著者紹介
森村たまき 翻訳家 内川出身