essay 東京だより(第8回)

essay 東京だより(第8回)

 あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。イギリス生まれのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。東京で活躍する千曲市ゆかりの方々を紹介するはずなのに脱線の多いこちらのコーナーですが、新年早々に脱線して長野県出身ジェンヌのご活躍の話から始めましょうか。

 現在公演中の花組公演『エンジェリックライ』『Jubilee(ジュビリー)』には長野市犀陵中学の生徒会長さんだったという天城れいん君と佐久長聖高校ご出身の湖華詩ちゃん、お二人の長野ジェンヌがご出演、と言うより、大活躍中です。

 『エンジェリックライ』は花組新トップコンビのお披露目公演なのですが、長らくスターとしてご活躍された専科の凪七瑠海さんのご退団公演でもあります。れいん君はお芝居では凪七さん演じる「ボス」の二人の子分のお一人として、最初はあくまで美麗なボディガード、悪役からだんだんポンコツぶりが露わになってきて、最後はどうしようもなくいい人だったファビオ役を、表情豊かにとっても魅力的に演じていらっしゃいます。またショーではオープニングから登場して美声で幕開けを告げ、若手場面では全体を率いてセンターで爆踊りしてあの大舞台でソロで踊るという、胸も血も熱くならざるを得ない大活躍です。

 また娘役の湖華詩ちゃんはというと、最終パレードで一番に大階段を降りてテーマ曲を歌う「エトワール」に今回大抜擢。愛らしいお顔でにこにこ笑いながら、スコーンと気持ちよい高音の出る歌声に、私の胸は熱く、誇らしい思いで一杯になるのです。長野ジェンヌ推し、やめられません。

 もう一つ、こちらは宣伝させてください。2017年に没したオックスフォードの大哲学者、デレク・パーフィットの伝記『デレク・パーフィット 哲学者が愛した哲学者(上・下)』(勁草書房)を夫と共訳で12月に出させていただきました。パーフィット先生は34年前に夫の留学したハーヴァードで初めてお会いして以来、ずーっと大好きなスイートでラブリーな先生で、この本を訳せたことも嬉しいのですが、訳者の特権で「パーフィット先生の思い出」まで書かせていただいたのも本当にありがたいことでした。パーフィット先生を知らない方にも、哲学に関心のない方にも、そのスーパー天才ぶりも心打つピュアーさも激しい哲学への執念も、数々の奇人エピソードもきっと面白い本だと思います。是非ご一読いただけたら嬉しいです。ではでは。

著者紹介 

森村たまき 翻訳家 内川出身