特集 受け入れ企業の経営者は「橋渡し役」に 外国人の受け入れは地域の理解から
「地域と外国人との共生」。こうしたテーマを掲げて意見交換しましょうと言っても、なかなかピンとこないかもしれない。
しかし、身近で働く外国人が多くなっているのではないだろうか。コンビニで会計のスタッフがバングラデシュの男性だったり、ホテルのフロントがネパールの女性のこともある。近くのメーカーにはベトナム人が複数働いており、会社が家を借りて共同で生活しているケースもある。地区の掃除当番をしている。
全国で外国人労働者は2025年10月時点で257万人。過去最多、ここ10年で約3倍になったという。長野県内の外国人労働者は同年10月では3万672人(長野労働局調べ)、前年比で2838人増加、約10%増えた。国別ではベトナム人が6991人で最も多く、フィリピン、インドネシアが4000人台と続く。対前年の増加率では、ネパール、ミャンマー、スリランカが多いという。
県内の企業にとっての重要な課題は人手不足だ。メーカーをはじめ、小売りや宿泊、飲食など多くの企業は外国人労働者に頼っているのが実情だ。ただ、先日発表された県のアンケートによると、約35%の県民は治安の悪化を理由に外国人労働者は「必要ない」と答えた。
その一方で、約38%は「外国人がいなければ働く現場は成り立たない」との回答だった。賛否が相半ばするなかで、地域との関わり合いの「橋渡し」をするのは、外国人を受け入れている企業であり、「世話役」となっている地域の日本人だろう。こうした方がしっかりとした理解の上に、外国人を受け入れる姿勢が地域の方にも理解してもらえるのではないだろか。
「あんずの里スタディツアー」を契機に外国人と地域の交流を盛んに
この3月28、29日の二日間、千曲市森、倉科の「あんずの里」での意見交換会と松代大本営の地下壕の見学に中国、台湾、香港出身のグループを中心に約30人が「スタディツアー」で訪れた。企画したのは東京大学大学院の総合文化研究科・国際社会科学専攻の阿古智子教授。参加者は中国、台湾、香港などから日本に住んだり訪問したりしている人たちだ。
ご縁があって阿古教授との知己を得た本紙記者は、強力な知人である千曲市の桐カフェのオーナー石澤洋子さんと夫の幸一さんの協力を得て、日程を調整した。思い立ったら「実行」あるのみ。ちくま未来戦略研究機構の柳澤純副会長の支援とともに、満蒙開拓の歴史に詳しい飯島春光元教諭の松代平和記念館での解説と松代大本営地下壕でのガイドも訪問した方々には感慨深い内容となった。
上田駅に降り立った一行は宿泊ホテルのマイクロバスであんずの里の北條農園に。天気に恵まれてあんずは三分咲きだった。例年よりも少し早めだという。あんずの苗木の植樹も10人が行った。
千曲市生萱の元幼稚園園長が千曲市とあんずのご縁を紙芝居で披露していただいたり、音楽イベントは目の不自由なハーモニカ演奏者の上原(かみはら)博司さんや、コカリナ演奏の松田祐子さんらのグループ、琵琶演奏の塚原佐久子さんのグループ、篠笛の野崎功さんの篠笛と、農園ではその素晴らしい音色に耳を傾けた。
その後は「地方創生と外国人との共生」をテーマにした意見交換会が開かれた。農園オーナーの北條昭宣さん、須坂市でぶどう、ももの果樹を栽培している井田光さんも参加して意見交換した。千曲市の企業に勤務している香港出身の若者と阿古教授が司会を務めた。
終了後、戸倉上山田温泉に宿泊した宿の夕食時には、千曲市のイベントなどで演技を披露している「南京玉すだれ」のグループ5人が素敵な演技と文化琴の2人が素晴らしい演奏を披露した。
今回のスタディツアーを企画した阿古教授は「私の関心は(縁があって支援している)香港の農業やアート、食、文芸活動などを通じて国際交流の拠点を作りたいことにあります。長野県、例えば千曲市の若いアーティストや農家の方々(気持ちが若い人)にこれからもお目にかかりたいです」と語った。
さらに、地域のことをもっと理解するために6月下旬のあんずの収穫の頃には「若い人たちと収穫の手伝いをしつつ、地域の人たちに話を伺う機会をぜひ作りたい計画もある」とのことだ。
(本紙特任記者 中澤幸彦)

北條農園で意見交換する参加者たち

松代大本営の地下壕を見学する参加者たち

杏の苗木を植樹する阿古智子教授(左)右は農園オーナーの北條昭宣さん

