歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
献体を望みし夫君身罷りぬ友に抱かるる三年の後 宮本律子
作者のご友人の夫は、生前に献体の意志を伝えておられた。夫が遺骨で友人のところに戻ってきたのは三年後であった。下句は、友人ご夫婦への敬愛が静かに詠われており、優れた歌になった。
【佳作】
七階の病室の空に鳶が翔ぶと告げ来し声は癒ゆる兆しか 百合
作者のお知り合いは、病院の七階の部屋に入院中。その部屋の窓から鳶が翔ぶのが見えたと、作者に伝えてきた。その言葉に、作者はお知り合いが少し恢復されてきたかと安堵する。病状に触れてはいないが、そう感じさせる表現が抑制的に用いられ、味わいのある歌となった。
【入選】
補聴器を初めてつけて驚くは一歩踏み出すスリッパの音 宮坂岩子
玄関に高く積まれた段ボール旅立つ子らの背たくましく 甘利真澄
家族らのあまたの衣類裁ち縫いし姉の手むくみ去にし如月 宮坂塘
凍み残る二月の整備で見つけたるセツブン草の小苗にエール 湯本孝一
膝痛め散歩かなわずこたつ番汗して帰る夫羨しき 中村妙子
あどけなきひよこのごとき一年生いつしか凛たる卒業生 中村邦久
梅の木は剪られることで尚更に勢い増して実をつけるべし 替佐梅蔵
賑やかに黄色い帽子が列をなしさくら花浴み学び舎に入る 小針俊明
花々が人間たちを嘲笑ってる自戒に塞ぐ今年の花見 柳澤 純
花山多佳子の『三本のやまぼふし』(2024砂小屋書房)から。から。
庭に落ちし焼夷弾にて風呂沸かしたるとぞ森岡貞香の母は
「悲の器」の時代は遥かとなりにけり「苦の器」なる人の多しも
【応募要領】
■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)
■住所・氏名・電話番号を付記 ■締め切り毎月十日
■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係

