歌壇 安曇於保奈 選 76号

歌壇 安曇於保奈 選

【秀逸】

献体を望みし夫君身罷りぬ友に抱かるる三年の後      宮本律子

 作者のご友人の夫は、生前に献体の意志を伝えておられた。夫が遺骨で友人のところに戻ってきたのは三年後であった。下句は、友人ご夫婦への敬愛が静かに詠われており、優れた歌になった。

【佳作】

七階の病室の空に鳶が翔ぶと告げ来し声は癒ゆる兆しか          百合

 作者のお知り合いは、病院の七階の部屋に入院中。その部屋の窓から鳶が翔ぶのが見えたと、作者に伝えてきた。その言葉に、作者はお知り合いが少し恢復されてきたかと安堵する。病状に触れてはいないが、そう感じさせる表現が抑制的に用いられ、味わいのある歌となった。

【入選】

補聴器を初めてつけて驚くは一歩踏み出すスリッパの音          宮坂岩子

玄関に高く積まれた段ボール旅立つ子らの背たくましく          甘利真澄

家族らのあまたの衣類裁ち縫いし姉の手むくみ去にし如月      宮坂塘

凍み残る二月の整備で見つけたるセツブン草の小苗にエール   湯本孝一

膝痛め散歩かなわずこたつ番汗して帰る夫羨しき       中村妙子

あどけなきひよこのごとき一年生いつしか凛たる卒業生          中村邦久

梅の木は剪られることで尚更に勢い増して実をつけるべし       替佐梅蔵

賑やかに黄色い帽子が列をなしさくら花浴み学び舎に入る      小針俊明

花々が人間たちを嘲笑ってる自戒に塞ぐ今年の花見   柳澤 純

 花山多佳子の『三本のやまぼふし』(2024砂小屋書房)から。から。

庭に落ちし焼夷弾にて風呂沸かしたるとぞ森岡貞香の母は

「悲の器」の時代は遥かとなりにけり「苦の器」なる人の多しも

【応募要領】

■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)
■住所・氏名・電話番号を付記 ■締め切り毎月十日 
■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係