自転車のある風景 第1回 再びタンデム returns(リターンズ)

自転車のある風景 第1回 再びタンデム returns(リターンズ)

 ”サドルとペダルが前後に付いている二人乗り自転車のことをタンデムという….”7年前、こんな一節で始まった”自転車のある風景”。

 毎回1枚の自転車の写真をとりあげ、その写真にまつわるエピソードをつづっていくこのエッセイ。3年ぶりの連載再開にあたり、再びタンデムの写真からスタートしたいと思う。今回の色褪せた古い写真は、子供達を乗せたタンデムでサイクリングに出かけるそんなシーンを切り取った一枚。この日の目的地である山の上にある動物園を目指し、出発する直前の家族スナップである。いざ出発すると平地は快適で、歌を唄ったり、しりとりをしたり楽しみながら家族でのサイクリングを満喫。しかし、登り坂が始まると様子は一変。どこまでも続くキツイ山道に後方の妻が途中でギブアップしてしまった。ハアハア息を切らせながら一人でタンデムを漕ぎ続けた自分もゴール目前で力尽きてサドルから降りる事に。結局最後は子供達と妻をおろしてタンデムを押しながら歩いて駐車場のゲートをくぐらなければならなかった。 その後は動物園やアスレチックでたっぷり遊び子供達も大満足。その帰り道、チャイルドシートで娘がスヤスヤ。前後に揺れる娘の頭をアゴで帽子の上から押さえながらペダルを漕ぎ、無事に家に着いた時はいつも以上にほっとしたのを覚えている。

 タンデムの場合、どちらか一人が漕ぐのをやめてしまうと、二人が乗った重い自転車を残った一人で漕ぎ続けることになる。この日のツーリングでは身をもってそんな事実を確認することが出来た。やがて子供たちが成長するとそれぞれ自分の足でペダルを漕ぐようになり、家族で1台のタンデムに乗ることはなくなってしまった。残されたのは家族との思い出と色褪せた写真だけだ。今でもこの写真を見ると、家族を乗せて漕ぎ上がったきつい坂道と、タンデムの前後から応援してくれる子供達の声が心に蘇って来る。貴重な家族とのタンデムの思い出である。

    

著者紹介

石黒靖彦

cafe自転車屋

マスター

屋代出身

本紙創刊時から39号まで連載していた「自転車のある風景」が読者の皆様のご要望にお応えし今月から再開します。自転車の魅力をお楽しみください。