月の都千曲 日本遺産認定後初めての 秋の名月

月の都千曲
日本遺産認定後初めての
中秋の名月

「平成最後の名月」増田恵(信州千曲観光局)

月と千曲地域の関わり


 今年の中秋の名月は10月1日。6月に千曲市が「月の都千曲」の日本遺産認定を受けて以降初の十五夜の名月となる。
 古くは古今和歌集にも歌われた更級の月。棄老伝承の地は元々冠着山であったが(「大和物語」)、田毎の月の名が広まるにつれ、次第に現在の姨捨山に比定されていったと思われる。
 姨捨の棚田と田毎の月 文化文政年間には多くの人々が姨捨を訪れ、1818年の中秋の名月には一夜に1000人もの月見客がこの地に集まったとされる。その要因の一つが、松尾芭蕉による「更科紀行」。
芭蕉は中秋の名月に合わせてこの地を訪れ、「悌や姨ひとりなく月の友」ほかの句を詠んでいる。没後の明和6年(1769)には、長楽寺境内に「芭蕉翁面影塚」が建立された。 

「長月の満月」金井慎吾
 (信州千曲観光局)

長楽寺の満月ライブ


 近現代に入っても堀辰雄や井上靖などが訪れ、姨捨にちなんだ作品を創作するなど文芸縁の地として知られてきた。その伝統は現代でも途切れることはない。長楽寺では毎月満月の夜に音楽ライブを開催している。これは2012年の秋からギタリスト・作曲家の吉川忠英さん(東京在住)が発起人となり、スタートしたもので、収益は長楽寺へのお布施に充てられている。
これまでも千曲市観光大使のトミー・チョウさんをけじめ、多くのアーティストが参加しているこのライブは県外でも認知度が高く、遠方からの訪問者も多いという。
 今年は残念ながら新型コロナの影響で3月以降の開催が見送りに。今月の中秋の名月に照準を合わせて再開を予定していたが、東京からの移動を考慮して延期となっている(現在日程を調整中)。
 運営に関わってきた宮城商店 千曲市中)の宮城恵美子さんは「こういったイベントは長くやることが大事。これからも人々が触れ合う機会を作りたい」と語ってくれた。姨捨七月の物語はこれからも紡がれていくことだろう。

「平成最後の名月」増田恵(信州千曲観光局)