さらはにズム 姨捨のイタリア料理店

姨捨のイタリア料理店

さらはにズム

ちくま論説姨捨にイタリアンの料理店がオープンする。長野市でレストランを経営しているシェフの山崎芳忠さん(力石出身)が、関朋広シェフを相棒に千曲市の姨捨観光会館のオーナーシェフに挑戦しようというのだ。

 姨捨は古代から月の名所として人口に膾炙してきた。平安時代から室町時代頃までは「姨捨山といえば冠着山」の時代で、古今和歌集に「わが心なぐさめかねつさらしなや姨捨山にてる月を見て」に初めて登場してから全国的に歌枕が形成され、姨捨は「さびしい山国の月」のイメージとして都の貴族たちから盛んに和歌に詠まれるようになった。江戸時代になると姨捨山の名が長楽寺周辺に移り、実態も変化していく。境内の奇岩や棚田、眺望の素晴らしさなどが注目を集め、全国からの訪問者が増加。いつしか姨捨伝説の地ともなり、その頃から観光地の様相を呈していった。

 また、折から新しい文芸の俳諧が盛んになったことで、和歌とは違った魅力が姨捨に加えられることになる。俳聖・松尾芭蕉が元禄元年に長楽寺を訪れ、「更科紀行」を著したのを契機に、姨捨は俳諧のメッカとなり益々観光地化が進んだ。現在は、姨捨の棚田が国の重要文化的景観や、日本の棚田百選に選定され、国内を代表する名所となったのはご承知の通りだ。

 さて、この名所のシンボルでもある姨捨観光会館の食事処は、開設以来何人もの料理人が日本そばをメインに奮闘してきたが、いずれも採算が取れずに頓挫した。今回山崎シェフは、イタリアンで新しい姨捨をコンセプトに掲げる。地元食材を使用し、地元のシェフならではの心のこもった料理でもてなして、姨捨とさらしなのランドスケープを意識した料理店を目指すのだという。ぜひ一度冬の姨捨「名月とイタリアン」に足を延ばしてみたい。