ウッドハウスの世界 (18) 森村たまき

ウッドハウスの世界 (18) 森村たまき

森村たまき

(18)

こんにちは、イギリス生まれのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。一回お休みをいただいて、その前はウッドハウスが幼少期を過ごした香港の話をしました。今回は再びウッドハウスとミュージカルつながりで、いささか個人的な話をいたしましょうか。

 本年二〇二一年年頭、宝塚歌劇団花組はウッドハウス原作の『Oh, Kay!』を翻案したブロードウェイ・ミュージカル『NICE WORK IF YOU CAN GET IT !』を上演しました。そして今、星組が山田風太郎原作『柳生忍法帖』、『モアー・ダンディズム』を公演中です。初日と二日目のマチネーの二日続けて観劇してしまった私ですが、この作品に私が通いつめたい理由は三つあります。何よりかにより第一には、我が母校屋代高校出身、朱紫令真さんがご出演でいらっしゃること。そして私の翻訳したジーヴス・シリーズを『プリーズ、ジーヴス(1)?(3)、『ジーヴス英国紳士録』、『ジーヴス狂騒紳士録』(白泉社)の五冊のかたちで永遠不朽の漫画にしてくださった漫画家・勝田文さんが、全身全霊を傾けて漫画のかたちで世に問うてこの夏完結した『風太郎不戦日記』(全三巻、講談社)の原作者、山田風太郎の奇想天外幻想怪奇トンデモワールド初の宝塚ミュージカル化作品であることに、個人的なつながりを感じてしまうからです。そして第三は、この公演が宝塚の理想を生身の体で体現された愛月ひかるさんの退団公演であることです。

 そうそう、今年宝塚でウッドハウスの『NICE WORK』 が上演されるというので、その演出をされる原田諒先生が演出された二期会オペラ『椿姫』を上野の文化会館に観にいって、終演後、原田先生のトークを伺った時、その司会進行役を務められたのが、そのジーヴス漫画の勝田文さんの大ファンゆえに勝田さん挿絵で『乙女のクラッシック』(二〇一一年、新人往来社)を出された高野麻衣さんで、世の中色々つながるものなのだなあと、どきどきうれしく思ってしまったのでした。今回の『柳生忍法帖』は、地元出身の屋代高校の後輩、朱紫令真さんご出演で、しかもショーの愛月さんご出演大シーンでは、水色の軍服で颯爽と一番に出ていらして、しかも真ん中で歌って踊られて、宝塚愛と後輩愛と地元愛と、そして長生きしてると色々うれしいことあるなあと色々なつながりに感謝で、胸いっぱい炸裂しそうな無我夢中の歓喜を味わったのでした。

 ウッドハウスの翻訳をしていると、本当に色々いいことがたくさんあるのですよ。