ウッドハウスの世界(14)森村たまき

こんにちは、イギリス生まれのユーモア作家、P・G・ウッドハウスの翻訳をしております、森村たまきです。前回はウッドハウスの終の住処、ロングアイランドのレムゼンバーグにてお墓参りとウッドハウス邸訪問を果たした時のお話をしました。今回はウッドハウスの墓所のある教会敷地内に建てられた、ウッドハウス記念碑の話をいたしましょう。
 写真がそのウッドハウス記念碑ですが、二〇一二年にアンドレア・ジェイコブセンとボブ・レインズ夫妻のイニシアティヴで建てられました。この写真の愉快な二人がボブとアンドレアのオシドリ夫妻。二人とも弁護士で、ボブはペンシルヴァニア州立大学の家族法教授です。ウッドハウスを崇拝するあまり、この地に記念碑が建てられるべきと地元法規を調べ抜き、ファンドレイジングをしてこの碑を建てたのです。除幕式直後の笑顔の写真です。

 二人の記した碑文には「ここ、レムゼンバーグ・コミュニティ教会の礼拝堂裏の墓地にサー・ペラム・グレンヴィル・ウッドハウス、英国生まれの作家、作詞家、詩人、バーティー・ウースターとジーヴス、スミス、エムズワース卿、マリナー氏他、数多の永遠不滅のキャラクタの生みの親。彼は一九五五年にアメリカ市民となり、生涯最後の二〇年間をレムゼンバーブで暮らし、働いた。没する直前、彼は英国ナイト爵位に叙された。彼の優しいユーモアと至高壮大なる言語は今尚世界中の読者たちによろこびをもたらしている。」とあります。
 二〇一二年のこの除幕式の時には、世界中からウッドハウス仲間が集まり、ペン・ステーションからボブとアンドレアと一緒に貸切バスに乗ってレムゼンバーブに向かい、地元の方々と祝賀パ上アイーをしたのでした。その日はアメリカ国会図書館の映画史研究者『ウッドハウスとハリウッド』の著者、ブライアンーテイウスの誕生日でお祝いもして、雨の中一緒に感涙にむせびながらお墓参りをしたのを憶えています。ブライアンは去年若くして他界したので、あの時会ったのが最後になってしまいました。

 さて、ひさびさのウッドハウス新訳新刊『ボドキン家の強運』 (国書刊行会)は六月二二日刊行予定、最大最長の大名作長編です。どうぞお楽しみに。