思いを形に 夢咲く文 第10回 最終回 自分史の先駆け「更級日記」 国宝に

思いを形に 夢咲く文 第10回 最終回 自分史の先駆け「更級日記」 国宝に

 千曲市にあるさらしなの里は、かつて「更級郡」だったところ。この郡名は自分史の先駆けとも言われる、平安時代の日記文学のタイトル(更級日記)になりました。

 少女のときから晩年までを、都の貴族女性がたんたんと読みやすい分量で綴ったもので、今でもさまざまな解釈や分析がなされ、女性を中心に多くのファンがいます。百人一首の考案者、藤原定家が書き写した「更級日記」は、ことし国宝に指定されます。

 「更級日記」作者をはじめ都人が「さらしな」にあこがれた理由を調べ、文章を書いたり短歌を作ったりして、冊子や本の制作まで一貫してやってきました。それで思うのは、伝えたいことは一度に全部を書こうとせず、書き溜めていくことが大事だということです。「更級日記」作者は、折々に作っていた和歌をもとに、現代では日記文学と位置付けられる文章を晩年、仕上げたと私は想像しています。

伝えたい思いの表現の形は、エッセイや詩、短歌、俳句、写真などいろいろあります。発表も、届けたい人向けだけの本、手作りの冊子、自分のホームページ(HP)へのアップなど、さまざまです。

 本連載は今回で終了。さらしな堂のHPでは、作文の際に心がけるとよいことを、折にふれて書いています。QRコードからご覧ください。

夢の作文支援センターさらしな堂 大谷善邦 (元共同通信記者。著書「白 さらしな発日本美意識考」など)