さらはにズム ちくま論説

さらはにズム ちくま論説

▼昨年の早春に、日本近世史研究家の柄木田文明先生(雨宮在住)より「中条唯七郎・本家日記」の翻刻版が近〃出版されるので、それをテキストに読み解く講座を開いたらどうかとのご提案があった。早速参加者を応募して、4月より地元の人を中心に20人が先生のご指導の下「中条唯七郎・本家日記を読む会」が毎月1回のペースで始まった。

▼江戸時代後期に、埴科郡森村(現千曲市森)の名主・中条唯七郎が1817年(文化14年)45歳のときから書き始め、1847年(弘化4年)75歳になるまでの30年間書き続けた日記の翻刻版(全6巻)を刊行した中村芙美子さんは、唯七郎の「九州道中日記」の関わりがあったとはいえ、九州の出身(東京都在住)にも拘わらず、なぜこのような大仕事を遂げたか。それは日記から読み取れる唯七郎の真摯な人柄に魅せられたからに相違ない。

▼唯七郎は名主の傍ら、村内屈指の文化人でもあった。松代藩医に師事したり、村の医師柏原壽泉に和漢朗詠集、中国古典を授かり、村の若者たちに素読や謡曲を教授した。また著述も多く「九州道中日記」には長崎の出島を訪れた記録があり、「徒然日記」には弘化の善光寺大地震の克明な記録を残している。

▼講座講師の柄木田先生は、講座の参加者全員が日記を現代語に読み解く過程で、村の出来事がだんだん浮き彫りにされ、臨場感ある村の生活がわかって興味をそそる楽しい講座ができるのだと言う。

▼この講座が回を重ねてやがて、江戸時代の先人たちの生き生きとした暮し方が、今の我々千曲市民の暮らしやまちづくりに必ずや貢献するはずだ。善光寺大地震の記録などは現今の防災対策に少なからず役立つのでは。