おじょこな800字小説 第五十三回「ラジオ」

第五十三回「ラジオ」作・塚田浩司(柏屋当主 屋代出身)

 「ラジオ始まるよ」

 私はソファーに座り悠平を呼ぶ。

 「あー、わかった」

 悠平はいつものように、ほうじ茶を用意しながら答える。

 金曜日の深夜十二時は歌手の白崎ユキのラジオを聴くのが定番だ。

 お互いユキのファンでもあるけど、それ以上にユキがリスナーの悩みにずばずば答えるコーナーを私たちは気に入っている。

 悠平がマグカップ片手に私の隣に腰を下ろす。その瞬間、胸がドキドキし始めた。

 いつもならリラックスして聴くのだけど、今日は違う。なぜなら私はこのラジオにお便りメールを出しているからだ。おそらく今日読まれるはず。

 悠平とは同棲して二年。付き合って六年だ。私ももう三十歳だし、そろそろ結婚と思っている。それなのに悠平は中々プロポーズしてくれない。これがお悩みメールの内容だ。

 軽快な音楽と共にラジオが始まった。

 「こんばんはー、みんな起きてるー」とお決まりの挨拶からスタートした。いつもどおり、近況報告から始まったが、全く頭に入ってこない。途中、ユキの新曲が挟まれ、そしてとうとうお悩みコーナーの時間になった。

 「それでは、まず最初は、ラジオネーム、チビヤギさん」

 いきなり私だ。心拍数が跳ね上がる。

 ユキが私のメールを読み上げた。

 私の目論見は、ユキの回答だけではなかった。

Photo AC

 同棲二年、三十歳の女がプロポーズを待っている。それを聴けば悠平も自分ごととして考えるはず。プロポーズを促すことになると思ったのだ。

 私のメールが読まれた。ユキの回答は、「待っているだけじゃなくて自分から行った方がいい」という正攻法なアドバイスだった。それを聞きながら横目で悠平を見る。ユキの言うように自分から行く手もあるが、出来ればプロポーズされたい。すると、悠平が思いつめた顔で私を見た。

 「話があるんだ」

 さっき以上に心臓が激しく動き出した。もしかして……。

 私は姿勢を正して悠平の言葉を待った。

 「さて、続いてはラジオネーム、ほうじ茶さん。ユキさん、相談です。僕には同棲して二年の彼女がいます。それなのに他の人を好きになってしまいました。でも、付き合って六年も経つので、中々別れの言葉を言えません。どうしたらいいでしょうか?」