ひなた短編文学賞 大賞受賞 わたしとシーグラス 相生たおず

ひなた短編文学賞 大賞受賞 わたしとシーグラス 相生たおず  年の離れた姉とともに、わたしは砂浜を歩いていた。昼下がりの海は穏やかで、春の陽射しを受けて、きらきらと眩しく光っている。 「懐かしいな、こ

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第四十四回「同級生」 おじょこな800字小説 塚田浩司/柏屋当主。屋代出身。

 小学校時代の同級生の和也と二十年ぶりに会うことになった。SNSで名前を見かけた俺の方から声を掛けた。喫茶店で再会を果たしたのだが、会うなり和也は嬉しそうに「久しぶり」と俺に満面の笑みを浮かべた。昔と

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第四十三回「鈍感な男」 作・塚田浩司 おじょこな800字小説 「ねえ、私を見て何か気づかない?」

第四十三回「鈍感な男」 作・塚田浩司 おじょこな800字小説 「ねえ、私を見て何か気づかない?」  夕食中、妻に 訊かれ、正樹はドキッとした。正樹は昔から鈍感だった。妻が髪を切っても買ったばかりのスカ

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おじょこな800字小説 第四十一回「詐欺だけに」 塚田浩司/柏屋当主。屋代出身。

おじょこな800字小説 第四十一回「詐欺だけに」 「このところ犯罪が横行していまして、その犯罪グループのリストの中におばあちゃんのお孫さんの名前があったんですよ」  警察官役の俺が、お婆さん役の笠置に

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おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十八回「刺身の盛り合わせ」

おじょこな800字小説 作・塚田浩司 第三十八回「刺身の盛り合わせ」  大晦日。東京から帰郷する俺のために、母が腕をふるって料理を作ってくれる。唐揚げにハンバーグにフライドポテトなど子供が好きなものば

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ちくま800字文学賞 受賞作 発表  佳作受賞作「縁合い」 なぎさ奈緒

ちくま800字文学賞 受賞作 発表  佳作受賞作 「縁合い」  なぎさ奈緒  私の故郷にはある言い伝えがある。  カラスの多い夜は特別な夜店が立つというものだ。子供のころ、一度だけ訪れたことがある。

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 『第一回 ちくま800字文学賞』 佳作受賞作「非対面型怪奇モデル」 エビハラ

 『第一回 ちくま800字文学賞』 佳作受賞作 「非対面型怪奇モデル」  エビハラ  2020年某日、夜。郊外の公会堂に集まる人影があった。  長い黒髪を靡かせ、大きなマスクをした女性の集団は、係員に

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ちくま800字文学賞 大賞受賞作「嘘を八百」  田原にか

ちくま800字文学賞 大賞受賞作 「嘘を八百」   田原にか  満月の夜、壮太は美優の言葉を思い出していた。 「人間は一人の相手に対して、800までしか嘘がつけないの。だから嘘を800回言いあおうよ。

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