歌壇 安曇於保奈 選  26年7月

歌壇 安曇於保奈 選

【秀逸】

『鍬を握る』を入所の汝に持ちゆけば「満州の…」と言いて涙ぐみたり

百合

 満蒙開拓の歴史。全国から27万人、長野県は最多の3万3千人。ソ連軍の侵攻により人々は逃避行の中、病気や集団自決などで8万人が亡くなった。信濃毎日新聞が2024年から連載した記事がこの本に。参加されたこの方はすでに入所されている。作者が持参したこの本をご覧になり、当時のことを思い出されて涙ぐんだ。歌にした作者の気概。

【佳作】

葉桜は段々畑にキラキラと茶畑のごと緑爛漫

中村邦久

 段々畑に見事な花を咲かせた桜が今は鮮やかな葉桜になっている。その情景がまるで茶畑のように光って見えたと作者は詠う。茶畑の比喩は斬新。結句も優れており、絵画を見るような歌になった。

【入選】

黄緑のアゲハ幼虫般若顔雀逃げたり朝を生き延ぶ       中村妙子

ルソン島で戦病死せし28歳無言館語る悲しき史実   甘利真澄

義母と夫長き介護をやりとげて米寿の友は自分を生きる          宮坂岩子

空碧し若草山のてっぺんで鹿と見下ろす大仏殿          伯田ちさと

二年目の植え替えしたるクレマチス母の日迎え競いて咲きぬ   湯本孝一

ありがとうの言を残して貫首さま道元さんと並び給いぬ          宮本律子

霜に耐え雪にたわみしえんどうの白き花咲き実の甘きこと       宮坂 塘

僕のギター釣り合わないけどKヤイリ下手くそなのに優しいコイツ      替佐梅蔵

サッカーブラボー防衛費べらぼう歓喜と憤慨日本の行く手      柳澤 純

 花山多佳子の『三本のやまぼふし』(2024砂小屋書房)から。

伝統とは統べるを伝へることなればそも軍隊や国家に遣ふと

【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係