歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
『鍬を握る』を入所の汝に持ちゆけば「満州の…」と言いて涙ぐみたり
百合
満蒙開拓の歴史。全国から27万人、長野県は最多の3万3千人。ソ連軍の侵攻により人々は逃避行の中、病気や集団自決などで8万人が亡くなった。信濃毎日新聞が2024年から連載した記事がこの本に。参加されたこの方はすでに入所されている。作者が持参したこの本をご覧になり、当時のことを思い出されて涙ぐんだ。歌にした作者の気概。
【佳作】
葉桜は段々畑にキラキラと茶畑のごと緑爛漫
中村邦久
段々畑に見事な花を咲かせた桜が今は鮮やかな葉桜になっている。その情景がまるで茶畑のように光って見えたと作者は詠う。茶畑の比喩は斬新。結句も優れており、絵画を見るような歌になった。
【入選】
黄緑のアゲハ幼虫般若顔雀逃げたり朝を生き延ぶ 中村妙子
ルソン島で戦病死せし28歳無言館語る悲しき史実 甘利真澄
義母と夫長き介護をやりとげて米寿の友は自分を生きる 宮坂岩子
空碧し若草山のてっぺんで鹿と見下ろす大仏殿 伯田ちさと
二年目の植え替えしたるクレマチス母の日迎え競いて咲きぬ 湯本孝一
ありがとうの言を残して貫首さま道元さんと並び給いぬ 宮本律子
霜に耐え雪にたわみしえんどうの白き花咲き実の甘きこと 宮坂 塘
僕のギター釣り合わないけどKヤイリ下手くそなのに優しいコイツ 替佐梅蔵
サッカーブラボー防衛費べらぼう歓喜と憤慨日本の行く手 柳澤 純
花山多佳子の『三本のやまぼふし』(2024砂小屋書房)から。
伝統とは統べるを伝へることなればそも軍隊や国家に遣ふと
【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階 ちくま未来新聞 歌壇係

