自転車のある風景 returns(リターンズ) フォト&エッセイ 第4回 ペニーファージング

自転車のある風景 returns(リターンズ) フォト&エッセイ 第4回 ペニーファージング

2026上山田大会

 6月に上山田で行われた手作り旅行自転車の全国大会“ジャパンバイクテクニーク”に1台だけ他とは明らかに違う自転車がエントリーしていた。それは日本では“だるま自転車“と呼ばれ、イギリスでは特徴的な大小のタイヤを、大きなペニー硬貨と小さなファージング硬貨に例えて“ペニーファージング”と呼ばれている自転車。実は自分も1台所有しているのだが、インテリアとして購入したものと、今回の大会に出場した千曲市周辺を70km以上走るその自転車とは正にオモチャとホンモノ程の違いがあった。

 普段店の入口に飾られている自分のペニーファージングも実際に乗車する事が出来るのだが、先日、屋代線跡地に出来たサイクリングロードの開通式に出席する際に、会場まで数100m往復しただけであまりの遅さと乗り心地の悪さに、普段乗っている現在の自転車の有り難さを痛感させられた。ペニーファージングの前輪が大きいのは、大きい方がスピードが出せるからだが、速く走れる分コントロールが難しく、高くなってしまう着座位置は、事故の衝撃を大きくする。誰でも安全に乗れるようにあまり車輪の大きくない自分のペニーファージングは、一漕ぎで進む距離が短いので疲れてしまうのだ。かといって速さを求めて車輪を大きくしてしまうと漕ぐのが重くなって坂道が登れなくなってしまう。

 こんな風に書くと、そもそもそんな実用性の低い自転車は旅行用に向いていないのでは?と思われそうだが、意外にも、初めて世界一周に成功した自転車はこのペニーファージングだったそうだ。今回の大会でも、坂道を駆け上がり、山道をブレーキングだけで華麗に下ってくる姿を実際にこの眼にして、乗り手次第で100年以上前に進化を止めた自転車でもここまで出来るのだと思い知らされた。視点が高く普段と違う景色が広がるこの自転車で、たまには急がないツーリングに出かけて見るのも良いかもしれない。

著者紹介

石黒靖彦 cafe自転車屋 マスター 屋代出身

写真・ペニーファージング