歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
あれはいつ妻と訪ねし瀬波浜波音風音いまも変わらず
甘利真澄
新潟県村上市にある瀬波温泉。海水浴場が温泉街の裏手に広がっている。作者の連れ合いと以前に訪れたこの地。思い出の海を再訪した作者は、あの頃と変わらない瀬波浜に佇み、波音も風音もまるで同じだと感慨に耽る。亡き妻への愛惜と家族をともに営んだ人生への慈しみが伝わる優れた歌になった。
【佳作】
三才児宇宙に行くと空を指すじいじとばあばは星になり待つ
中村妙子
川上村出身の油井亀美也さんの国際宇宙ステーションにおける活躍。そのニュースで知ったのか、作者の三歳のお孫さんは自分も宇宙飛行士になると祖父母に言った。その頃は祖父母は星になって待っているから、夢を実現してもらいたいと作者は詠う。
【入選】
九条とともに生き来し友愛でしホタルブクロがひとり咲きたり
百合
頼りなく初つる伸ばす朝顔は幼児のごとく母の手探す
伯田ちさと
戦争はどこどこまでも人間を狂人にする アンネの日記
宮坂岩子
丸々と太りし玉葱収穫す六00gの赤子の頭
宮本律子
しじゅうから二羽で間なしに虫運ぶきゅういの根元の巣の危うさよ
宮坂 塘
スマホ開け濁った画面に凍り付く昨日の俺は何していたのか
湯本孝一
若すぎた俺の歳まで10年だでもよくやった神は理不尽
中村邦久
砂利道をガタゴト揺れて進み行くやがて舗装の良き道となり
替佐梅蔵
気がつけば坂の途中にいつも居る八十路の坂はステッキ要るか
柳澤 純
花山多佳子の『三本のやまぼふし』(2024砂小屋書房)から。
書きなづみ伝へきれざりし同年の加藤典洋の失意をおもふ
ドローンが兵器を載せて飛ぶといふ米のせて飛ぶ鉢を恋ほしむ


