自転車のある風景 returns(リターンズ) 第2回 オーストラリア横断
自転車旅行おさらい
以前の連載では西のパースから、東のシドニーまで6300kmの自転車旅行で撮った写真をもとに、その一枚にまつわるエピソードを綴って来た。今回はそもそもの旅のきっかけや現在地などをざっとおさらいしておこうと思う。
元々はオートバイで出掛けるはずだったこの旅だが、バイクが盗難に遭ったことで、自転車に変更。その際、パースからシドニーまでは約6000kmなので一日100km走れば60日で横断が可能、1日100km走るには時速20kmで5時間漕ぐだけで大丈夫。そんなふうに細分化していき、これなら出来そうだという事で計画をスタートしたのだった。面白かったのはそれを話した時の人々の反応の違い。日本人や留学生の友人達は皆応援してくれたのだが、オーストラリア人からは反対する声の方が多く聞かれた。彼ら曰く、そんな馬鹿なことを考えるのは日本人とドイツ人だけだと言われ、反対しなかった下宿先の大家も、後5年修行すれば出来るだろうと言って、毎日重りを積んだ自転車で日中は走り、夜は庭にテントを張って寝る生活を強要されたのだった。
そんな生活に見切りを付けるため、逃げるようにパースを出発。直後に自分を連れ戻すためにトラックが回収に向かったと聞いて警戒していたが杞憂に終わり、ようやく旅を楽しむことが出来るようになった。計画では1日100kmが目標だったが、毎日多めに走り、余分に走った分はいざという時の貯金にしていった。
毎日変わらない景色の中で、サイクルコンピューターの積算距離を頼りに、走行距離を稼いで行く。そんな日々を繰り返しながら、少しづつシドニーに近づいて行くのだった。旅はようやく隣のサウスウェールズ州に入ったばかり。東西を繋ぐナラボー平原の途中である。これからアデレード、メルボルンを抜けて、旅のエピソードはまだ続いて行く。スマホなど無かった在し日の旅の記録に、もうしばらくお付き合い願いたい。
出発前日、友人の寮の部屋で。

著者紹介
石黒靖彦 cafe自転車屋
マスター 屋代出身

