歌壇 安曇於保奈 選
【秀逸】
子に読みしすりきれ絵本をせがむ孫膝のぬくもり命愛しむ 中村妙子
作者が子どもに読んで聞かせた絵本はもう擦り切れている。その絵本を今度は孫が読んでとせがむ。膝に伝わる孫のぬくもりは繋がる命の愛しさ。素直な表現で優れた歌になった。
【佳作】
ひと冬の感謝を込めて片付けるけだしの坂の筵四枚 替佐梅蔵
「けだし」は栄村をはじめとする奥信濃の方言で「急な坂」のことであろう。雪深い地域。雪で滑ってはいけないと、家の玄関先の坂に筵を敷く。春を迎える頃、守ってくれた筵に感謝しつつ片付ける人々。冬の厳しさを共有する作者の優しい眼差しが、この歌を生んだ。
【入選】
雪原に十万の兵士の墓並ぶこれが祖国とプーチン言うや 百合
それぞれに語りかけつつ飾り付け雛人形と早咲きの梅 甘利真澄
足形の土器にわが子の跡残す写真なかりし縄文の母 中村邦久
ママ、あしにおなまえかいて数字でなく ガザの子どもの叫びが届く 宮坂岩子
ままならぬ買い物通院昼なかを日に四便のガラ空きのバス 宮本律子
月を背に北へ渡るか鳥の群れ標なき吾を独り残して 小針俊明
改札に息急き入る我の背にまだ三分もありますの声 湯本孝一
馬鹿だなあ猫あくびして目を細めわれ関せずと戦禍眺める 柳澤 純
歳月をたっぷり刻みし面影の古稀を過ぎたる同級生ら つきはら
久々湊盈子の『非在の星』(2023)から。
大き柿そだてるために捨てらるる青柿あまた非正規ゆえに
【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階ちくま未来新聞 歌壇係
