歌壇 安曇於保奈 選 26年4月

歌壇 安曇於保奈 選

【秀逸】

子に読みしすりきれ絵本をせがむ孫膝のぬくもり命愛しむ       中村妙子

 作者が子どもに読んで聞かせた絵本はもう擦り切れている。その絵本を今度は孫が読んでとせがむ。膝に伝わる孫のぬくもりは繋がる命の愛しさ。素直な表現で優れた歌になった。 

【佳作】

ひと冬の感謝を込めて片付けるけだしの坂の筵四枚   替佐梅蔵

 「けだし」は栄村をはじめとする奥信濃の方言で「急な坂」のことであろう。雪深い地域。雪で滑ってはいけないと、家の玄関先の坂に筵を敷く。春を迎える頃、守ってくれた筵に感謝しつつ片付ける人々。冬の厳しさを共有する作者の優しい眼差しが、この歌を生んだ。

【入選】

雪原に十万の兵士の墓並ぶこれが祖国とプーチン言うや          百合

それぞれに語りかけつつ飾り付け雛人形と早咲きの梅             甘利真澄

足形の土器にわが子の跡残す写真なかりし縄文の母   中村邦久

ママ、あしにおなまえかいて数字でなく ガザの子どもの叫びが届く   宮坂岩子

ままならぬ買い物通院昼なかを日に四便のガラ空きのバス      宮本律子

月を背に北へ渡るか鳥の群れ標なき吾を独り残して   小針俊明

改札に息急き入る我の背にまだ三分もありますの声   湯本孝一

馬鹿だなあ猫あくびして目を細めわれ関せずと戦禍眺める       柳澤 純

歳月をたっぷり刻みし面影の古稀を過ぎたる同級生ら つきはら

 久々湊盈子の『非在の星』(2023)から。

大き柿そだてるために捨てらるる青柿あまた非正規ゆえに

【応募要領】■官製はがきに三首まで(二重投稿は不可)■住所・氏名・電話番号を付記■締め切り毎月十日■宛先〒387‐0012 千曲市桜堂521 屋代西沢書店2階ちくま未来新聞 歌壇係